花嫁の純白のヴェールに手を掛けてよいのは、花婿だけだって知っているのかしら、このアホンダラは。
そして抵抗しない私も私だ。つまりアレだ。どっちも、どっち。
「馬子にも衣装」
……こ、この野郎。
「ふん。あんたにしちゃ最大級の誉め言葉だわね」
途端に、目の前の幼馴染の顔がくしゃりと歪んだ。
しまった。泣かすつもりなんてなかったってのに。私も泣くつもりなんてこれっぽっちもなかったのに。
「泣かないでよ」
「泣いてねぇよ」
「笑いなさいよ」
「笑えるか」
「嫌よ、笑ってよ」
こんな一生に一度あるかないかの私の晴れの舞台で、幼馴染のあんたが、そんな情けない顔をしないでよ。そんな顔で人の結婚式に参列するつもり? 冗談じゃないわ。
「無理」
無理、じゃないっつーの!
「……ほら、笑いなさいよ。最後ぐらい、大切な幼馴染の我儘を聞いて頂戴よ」
しょーちゃん。
何年ぶりかに、そう呼んだら、もう感極まっちゃって。今までの色んな思い出がどーっと押し寄せてきて。楽しかったことも、嬉しかったことも、悲しかったことも、悔しかったことも、むかついたことも、むかついたことも、むかついたことも……とにかくむかついたことも。
ひとつだけわかったのは、どうしたって私はこいつとは結婚できないし、したくないってこと。
しょーちゃん。でもね、私ね、あんたのこと、大好きだったのよ。本当よ?
チェリー 2007.04.22