かれの愛し方
盛大な溜息をついて、リクライニングソファにもたれた綱吉の隙を、六道骸は逃さなかった。彼はゴキブリも真っ青な素早さで、ソファのアームを掴み、綱吉の顔に己のそれをずいっと寄せたのだった。
「ぶへっ!」
「触るな、このど変態パイナップル!」
下から振り上げあられた拳が容赦なく骸の顎に叩き込まれ、さすがの骸もよろめいて、ふらふらと後ずさる。
「どうするのよ、骸。あの子、完全におまえに惚れちゃってるじゃないよ。責任とれるの?」
嘗て、一度だけ夜を共にした女がいた。彼女が特別だとかそいう気持ちは綱吉にはさらさらないけれど、やさしい女だった。その女を骸が抱いたという。いったいどんな手管を使ったのか、偶然に久しぶりに会った彼女は六道骸に夢中だった。それはいっそ病的なほどに。
「責任?」
はて? と、骸は顎をさすりながら小首を傾げてみせる。彼が綱吉に己の可愛さをアピールしようとしているのなら、それはものの見事に失敗に終わっていた。むしろ、綱吉はそのあまりの気色悪さに口元をひくつかせている。
「ああ、嫌だ。俺はお前と兄弟になんてなりたくなかったよ。おぞましいッ」
「怒らないんですか?」
「怒ってるじゃないか。気持ち悪いよ。おぞましい! おまえはどうしていつも俺をこうも不快にさせるんだよ」
「そういうことじゃありません。あのね、沢田綱吉くん。僕は君の女をとってしまったんですよ?」
おわかりですか?と、オッド・アイが綱吉の心の奥を探るように綱吉の顔を覗き込んでくる。ぎらりぎらりと嫌な光を放つその骸の双眸から、逆に綱吉は骸の真意を悟り、そして同時にさらなる嫌悪感におそわれた。
骸ははなから、彼女が綱吉と関係があると知っていたのだ。知っていて、こんな気狂い染みた暴挙に出たのだ。
「悪趣味だよ、骸」
綱吉が顔を顰めるのを、骸は、しかし、笑顔で軽やかに受け流した。
何気ない所作で綱吉の手をとり、その甲に口付けを落として、骸は言った。
「君が愛したものを、僕も愛してみたかったんです。それだけです」
「それが悪趣味だって言ってるんだよ、このマッド・パイナップル!」
リボーン|title by フルッタジャッポネーセ|0705113