あほんだらーの集い
「せかいいちきれいなのはシーラだ」
今年16になった少年が4歳児の舌足らずな口調を真似る様は、なんというか、ひじょうにシュールだった。しかもその少年というのがただの16歳ではなく、第4王子にして青龍将軍閣下のオセロ様であらせられるというのだから。自分の旦那ながら、気色悪い。
青龍将軍閣下の妻にして、同じく青龍軍の副将軍を務める二葉は頬をひくひく引きつらせて、腕の中の泣きじゃくる第5王子オロロンの髪を梳いた。
「――と言ったの? オロロン様が?」
「うん。女を見る目がないんだ、このアホンダラは。シーラよりも二葉のほうが綺麗じゃないか」
だからオセロはオロロンを殴ったのだという。そんな、なんてめちゃくちゃな。
「君、そりゃあオロロン様が全面的に正しいよ。アホンダラは君のほうだよ、オセロ」
実際、オロロンの生みの親のシーラは他のどの后よりも美しかった。その美醜を血と汗にまみれて従軍する二葉と比較するまでもない。だいたいにして、第4王子の美的センスがちょっとおかしいのだ。つくづく、我が旦那ながらおかしな人だ、と二葉は思った。
「泣かないで、ねえ、オロロン様。今回はあなたの兄が悪かったね。でもこれも悪気があったわけじゃないんだ。阿呆なだけなんだよ」
阿呆とはなんたる言い草だ、とオセロが隣でぶーたれているが無視だ。
ねえ、と二葉は涙でぐしゃぐしゃになったオロロンの顔をのぞきこんだ。
「オロロン様、今回は私に免じてオセロを赦してやってくれませんか?」
健気な第5王子は必死に涙と嗚咽を堪えようとしながら、うん、と言った。
「う、ひっく。あ、あの、あのね、二葉……ひっく」
「はい」
「世界一はシーラだけど。ひっく、二葉もきれいだよ。とてもとても。大好きだよ」
舌足らずな口調はそのままに。でもどこか兄であるオセロを彷彿とさせる面影とその言い回しに、二葉は不覚にもくらりときてしまった。
まったくもう、こんの兄弟は!
悪魔のオロロン|081014