「ミルヒーと旅行!?」
「仕方ないだろ。エリーゼにじじぃの世話を頼まれてるんだから」
「ふーんだデス。まんざらでもないクセに」
まあたしかに。色々勉強にもなるし。と、あっさり認めた真一を見て、恵はいよいよ口を尖らせてそっぽを向いてしまった。
「何だよ、おまえ妬いてんのか?」
「別に。妬いてなんかイマセン。先輩なんかくそくらえデス」
ピアノ椅子のうえで足をばたつかせたりなんかして…。思いっきり妬いてるじゃねぇか。
「先輩なんかミルヒーと結婚しちゃえばいいんデスよ」
「それだけは是非とも勘弁してもらいたいな。オレはおまえ以外のヤツと結婚する気なんざないからな」
あーそうデスか、それはよーゴザンしたね。そう口を開こうとした恵の顔が、そのまま固まること1秒。2秒。3秒……10秒。
「………おい」
妙な沈黙に耐えられなくなったように、真一は恵の肩に手を添えた。
「返事は?」
「……ほぇ?」
ダメだ、焦点がまったく合っていない。
「…………い、今のは、プロポズですか?」
「一応、そのつもりだけど――――っておい!!」
そのまま椅子からまっさかさまに落ちた恵が、その衝撃で今の一連の出来事をすっかり忘れてしまい、真一がプロポーズ仕切りなおしを余儀なくされたのであるが、それはまた別の話だ。


050225