顔の大半を覆う大きな黄色い嘴に額を寄せて、弥子はわんわん泣く。
悲しいとき、辛いとき、弥子は鳥の化け物を抱えて、泣く。奇怪で醜悪で、しかし、よくよく見ると何処か道化染みた感の拭いきれない化け物は、弥子をこことは違う何処か別の世界へと連れ去ってくれるような気がする。それは舞浜の鼠の王国に行ったときの高揚感に近い。嗚呼、こんな異形に癒しを求める自分は、いったい……。毒されるにも程がある。それでも、弥子は化け物にしがみ付く。
どうして化け物が弥子の抱擁を甘んじて受け入れてるのだろうとか、どうして弥子が悲しいときに限って化け物が化け物たる本来の姿を曝してくれるのだろうとか、弥子は考えない。考えたら、この化け物が闇の世界へと弥子を本当に連れ込んでいってしまいそうだから。
弥子はこの世界を離れるつもりなど毛頭ない。でも、化け物と離れるこも出来ない。
嗚呼、悲しい。悲しい。
何が悲しかったから、化け物に身を寄せているのか。いったい何が辛かったのか。それすら、弥子はもうわからない。今この状況が、只悲しくて、切なくて弥子は泣く。
化け物はうんともすんとも云わない。瞬きさえしない。弥子を泣かせたまま。
オー・マイ・ディア 060905