「最近眠れて入ないようだね」
「は?」
眠気眼でひとり遅い朝食をつっついていたハウルは、暖炉の前の椅子に腰掛けている荒地の魔女に視線をやった。ちなみに朝食を作っておいてくれたソフィーは扉の向こうの花畑に花を摘みに行ってしまっているし、マルクルも犬のヒンを連れて彼女についていってしまった。城に取り残っている人間は、ハウルと荒地の魔女だけ。妙な面子が残ってしまったな、なんて魔女に対して大変失礼なことをハウルが考えていたのは、内緒の話だ。
「綺麗なお肌が台無しだよ」
「ええ!?」
慌ててフォークを放り出して、頬に手を置いてみれば、確かに保湿がきちんとなされていないのか、少々かさついている気がしないでもない。嗚呼、僕の美貌が!!
ショックのあまり呆然としているハウルに、魔女は高らかに笑ってみせた。ソフィーの前ではとぼけた素振りしか見せないこの魔女は、ハウルに対してはいつもこういう態度で臨んでいる。知的で、聡明で、鋭い眼光。きっと、若かりし頃の彼女は、あのサリマンと張り合えるくらいの有能な魔女であったことだろう。
「我慢はよくないよ。爆発したときが、おっかないからね」
「………心得ておきます」
「何を我慢するっていうんだい?」
意味深な魔女の言葉に、ハウルは頷き、魔女はにやりと笑う。暖炉のカルシファーだけが頭に?マークを浮かべていた。
(ハウルの動く城,2004/12/??)(2005/12/31改)