キャラメルの牙



「なんで君と僕が残るかなあー」
 よりによって、と嘯くフランス人の男の口に、寅之介は文句ひとつ言わず黙々とキャラメル味のポップコーンを放り投げ続ける。
 花鹿たちが所用で遠くに行ってしまって、置いてきぼりにされたことが気に食わないらしいこのフランス男に、何を言っても無駄なことは寅之介自身よくわかっているつもりだ。だいたい寅之介だって別に好き好んでこの男といっしょにいるわけではないのだが、花鹿の頼みとあれば寅之介に断るという選択肢はないも同然だった。
 それにしても、眉間に皺を寄せながらしゃりもしゃりとポップコーンを咀嚼する男の見目の美しさといったらとんでもない。これでもこの男、今年で30代も後半のはず。けぶるような金髪といい、光り輝く青い瞳といい、白い肌といい、まるで――
「化物のような人ですね、ユージィンさん」
(どうして年とらないんだろう、この男)
「君は大概童顔だけどねぇえ」
「……」
 むうとふくれた寅之介に、男はあはははと楽しそうに笑って、そうしてとんでもない殺し文句を言うのだ。
「ありがとう。君がいてくれてよかったよ」

花咲ける青少年|20101016