河川敷で彼と並んで仰いだ空は、いつ見た空よりも澄んでいた。
――なあ仁。
緑の双眸を見る。
――せいぜい長生きしろよ。
その言葉の意味を、仁が正確に理解してくれたとは到底思えないけれど。


「輪廻転生って本当にあるのかな」
慶は瞠目し、隣の従弟を見下ろした。随分と縮まった身長差は、しかし逆転することはない。そろそろ従弟の成長期は打ち止めだろうから、これから先も慶はずっとこの従弟を見下ろし続けることになるのだろう。
「会いたいのか?」
愚問だと思いつつ、慶は問うた。案の定、会いたいよ、と従弟――光也は答えた。
「長生きしてれば会えるかな」
それともとっとと死んじゃって、天国に会いにいったほうがいいかな。――冗談とも本気ともつかぬ調子で、光也は言う。
「仁はもしかしたら泣いて喜んでくれるかもしれないが、まあ……じいさんがまず赦さないだろうよ」
「怒るかな」
「そりゃもうカンカンにな。そんなふうに会いに行ったって、せいぜい笑顔で罵倒されて、こっちに蹴り戻されるだけだろう」
「うん……」 ジぃちゃんが怒ったら怖いよなぁ、と光也は独り言のように呟いた。
「そもそも自殺したら極楽浄土には行けないはずだ」
「……んじゃダメじゃん」
「ダメダメだな」
あーあ、と光也は真夏の空を仰ぐ。空は、遠い。あのずっとずっと向こうに彼らはいるだろうか。
「別に、仁に限らないんだ」
光也の声は静かで、穏やかだった。
「俺は、皆に会いたい」
「そうだな」
「慶も?」
「そうだな」
一拍置いて、そして光也は嬉しそうに笑った。


060816