泣いた後というのは、どうしてこうも疲れるのだろうか。
屋上のフェンスにだらしなく寄りかかって、光也は平成の街を一望する。
彼の東京大空襲で焼け野原になったというのが、嘘みたいな光景だ。灰色の高層ビルに、色取り取りの洋風の屋根。瓦なんてものはまず見当たらない。道路は整備され、至るところに信号機が立ち、車のクラクションは鳴り止まない。
よく見慣れたはずのそれらが、今は何よりも疎ましく、光也の心を落ち着かなくさせた。
今、ここに光也を“慶光”と呼ぶ人間は、一人としていない。光也は光也でしかなく、その存在は誰もが認めている。大正の世では一瞬たりとも拭えることのなかった不安は、ここにはない。
ここは安堵すべき土地だ。安らかに生きるべき場所だ。
にもかかわらず、光也の心と体を支配する、この虚無感はどうしたことだろう。涙はすっかり枯れ、今はもう唯呼吸をすることだけで、精一杯だった。
アスファルトの上で生きて呼吸して
060302