たとえば、正義に燃えるヒーローのように、迫りくる絶望の未来を変えてやろう、とか。
たとえば、嘗ての偉人のように、その気になれば未来くらい自分の思い通りに変えられる、とか。―――そんなふうに思ったことは、光也は唯の一度もない。
只、何故だろう。いつからか、自分は仁を助けられるんじゃないか、と漠然と思ってた。
或いはその思いは、大正において異分子でしかない己の存在の脆弱さを守るための、光也なりの自己防衛の結果だったのかもしれない。慶光の想いを叶えなければならないという義務を己に課すことによって、あやふやになってゆく己という存在を、どうにか保とうとしたのかもしれない。―――それが全てだったというわけでは決してないけれど。
だけど、たぶん、そう。そんな不純で卑小な思いも、光也は常にどこかで抱えていたのだ。
欲しかったのは、自分だけの安らぎの場所。
求めていたのは、自分の名を愛しげに呼んでくれるあの声。
そして、緑の瞳が笑っている未来を、どうしても見たかった。
弱虫HER0
060302