あとからあとから溢れる涙を止める術知らない孫は、幼子のように慶光にしがみついた。この喪失感は光也ひとりで到底抱え込めるものではない。誰かに、否、“彼”を知る慶光にこそ縋りつかずにはいられなかったのだ。
慶光は、そんな光也の頭を慈しむように撫でてやった。
錯乱しているのか光也の話は要領を得なかったが、その内容は慶光を驚かせるには十分すぎるほどだった。震える孫の身体を抱きとめながら、慶光はそらを仰ぐ。
(嗚呼、神様……。)
長年、慶光を蝕んできたものが、昇華されていくようだった。

涙の泉の底から 060115