寂しかっただなんて口が裂けたって言えやしないけれど。
「兎は、寂しいと死んじゃうそうだよ」
「それ、嘘ですよ」
兎は寂しかろうが死にません。にべもなく言い放つその言葉に甘ったるい響きなんぞ皆無だ。
「……で、兎が何ですって?」
「なんでもない」
「なんでもないことはないんじゃないんですか」
その通り。なんでもないことなんてない。でもこれ以上は男の沽券にかかわる。
「なんでもないよ」
「ふーん。なんでもないんですかー」
難しい顔して黙り込む蓮の髪を、キョーコは両手で一つまみずつして、ふふぅ、と笑った。
「寂しがりやさんな黒兎さんはお臍を曲げてしまったのかしら?」と、とどめの一撃。
―――ピキリ。
兎は兎。か弱き、寂しがりやの兎。でも実は兎の歯は鋭く強靭なのだということを、キョーコはすっかり失念しているらしかった。
03:寂しがりやのウサギ 2006.06.06