パパが風邪をひく話




「こ こら!止めなさいっ」「止めません」
「ちょちょっと 本当に止めてくれっ」「煩いッ」

…………何 何のよ そこの万年新婚夫婦
日曜日の朝っぱらから 何でベッドの上で取っ組み合いなんかしてるの
今日は パパもママもお仕事お休みだから 寝坊するんじゃなかったの?
なのに 何でこんな時間から起きて 取っ組み合ってるの
煩くて目が覚めちゃったじゃない ったく

「で?何でこんなことになってるの?お兄ちゃん」「オヤジが風邪気味なんだと」
「へぇ〜……」
パパが風邪だなんて珍しい
体が丈夫なことと 今までの人生のなかで一度しか風邪をひいたことがないのが 自慢なんじゃなかったっけ?

でも パパの風邪と 今の取っ組み合いに何の関係が?
「ジュースだよ あの得体の知れない 一粒ですごくおいしいジュース」
「………あぁ………」
アレね あの激マズの謎ジュース
「アレを母さんが親父に飲ませようとして 親父が今 必死になって抵抗をしてるんだよ」
あのドロドロしたジュースは 私かお兄ちゃんが風邪をひくと
必ずママが作ってくれるんだけど
何ていうの? 珍味?
いや 珍味どころの騒ぎじゃないわね
不味いのなんのって……言葉じゃ言い尽くせないほど不味いのよ

「意外だわ」「うん?」
「パパもやっぱり嫌がるんだ」
「俺達には 折角母さんが作ってくれたジュースなんだから きちんと飲みなさい!!………とかなんとか言ってたくせに いざ自分が飲むとなるとあんなに抵抗するなんてな」
「よっぽどいやなのね」「みたいだね」

「止めなさいってば!!キョーコ!」「止めませんと何度言ったらわかるの!?」
「わかりたくもない………って うあ ちょ」「いい加減に諦めたら?」
「や 止め………っっ」「男でしょ!?」
「男女差別反対っ」「煩〜い」

「………パパもママの前じゃ 形無し」「同感」
こんな『敦賀蓮』の姿を 世の数百万の女性達が見たら ショックで失神するんだろうなぁ

それにしても ママのバランス感覚は尋常じゃないわ
あれだけパパと取っ組み合っておきながら ママの手にしているグラスからはジュースがただの一滴もこぼれてないじゃない
我が母ながら 天晴れだね

「まぁ あれだけ動けるなら パパの風邪もたいしたことはないわね」「うん」
あぁあぁ 枕は投げるものじゃないのよ? そこのお2人さん
パパもいい加減に諦めればいいのに
ママはね パパの体のこと心配してるのよ?

「あんたたち!!」
あ ママのお呼びがかかったわ
「イエッス マーム!」「了解!」
ふふふ パパ 覚悟を決めなさい

パパの右腕はお兄ちゃんが 左腕は私がしっかり押さえつけて…………
「!?こらっ 止めなさい!離しなさいって!」
「悪いな親父。母さんの命令だから」「ママには逆らえないのよ。パパ」
パパも怖いけど ママがキレルともっと怖いのは パパが一番よく知っていることでしょ?
「そういうことですから 諦めてくださいね。アナタ」
「っっっ!!!やめ〜〜〜!!」


(スキップ・ビート!,2004)(2006/01/03改)