RがKを慰める話



おかえり最上さん あれどうしたの ヒドイ顔して
何? なんでもない?
……あら そう
DVD観るの? 帰ってきて早々 あ 先に手を洗いなさいよ
おい なんつー古い映画を 俺の初主演のヤツじゃないか
何 初々しい 俺を見たいだと?
初々しいって……
じゃ 俺は向こうで台詞覚えでもやってるから 一人でみてなさい
一緒に観ろ? 冗談ジャないよイヤだイヤだって
こら 裾が延びる放しなさい
……わかりましたわかりました 一緒に見ればいいんでしょ
床に座ってみるの? はいはい隣ね

フローリングに体育座りなんかしちゃって
おい ココは笑って見るところだろ
なんだってそんなヒドイ顔して観てんだ
それにしてもこっちもヒドイな TV画面の中の数年前の俺
もう少しまともな演技が出来なかったのか かなり恥かしいんだけどなぁ…
「敦賀さんも昔は下手くそだったんですね」
……言うに事欠いてソレかい

―――――ゴン

イテ ア……頭が床に いたたた
こら 突然抱きついて押し倒すのはよしなさい
人の胸に顔うずめちゃって 珍しいね恥かしがり屋の君が
…… あれ泣いてんの? 胸の辺りが冷たい
泣いてない? あそう 君がそう言うのならそういう事にしといてあげるよ
「どうした?」 細い体だな また痩せたか?
きちんと食べなきゃ駄目だって 俺にいつも言ってるのは何処のどいつだ
「なんでもありません」
「どこが なんでもないんだ」
「うるさい」
うるさいって まったくこの子はいつもこうだ
頭のなかで悶々と悩んで悩んで
俺はこうやって傍にいて 抱きしめてあげるしかできなくて
まあ これでも少しはマシになったかな
昔は俺が傍に近づけこうとしても威嚇されたし

仕事で何かあったかな 今日のこの子の仕事は……あああの我侭女優と共演のドラマ収録か
そういえば あの人に昔迫られたことがあったな もちろん逃げたけど(怖かった……)
あの事根に持った あの人に嫌がらせでもうけたりしたのか

俺のせいか……

俺との関係が週刊誌にすっぱ抜かれてから 最上さんへの嫌がらせが耐えないのだ
ってこの子のマネージャーさんが言ってたっけな

俺のせいか……

「ゴメン」
「何で敦賀さんが謝るんですか」
「いや何となく」
「フフ」
あ やっと笑った 頬に涙のあとが残ってる
「三流女優って言われちゃいました」
「何だと」
「ちょっと失敗しちゃったんです 自業自得なんですけど」
それでそんな悪口言われたのか 人の失敗につけこむなんて
「あのね 俺にも失敗は腐るほどある 下手な時代もあった」
あんまり言いたくはないけど 俺にもそういう時代はあった 
そこで流れてる映画がいい例だ いい加減止めてもいいかな? 観るに耐えない
「失敗は恥じることじゃない」
「わかってます わかってるんだけど」
「他にも何か言われたのか」
「こんな三流女優の私なんかじゃ 敦賀さんにはつり合わないって」
それがショックだったのか 俺とつり合わないって言われたのが
嗚呼不謹慎だけれど 俺は少し嬉しい

「上手くなりたいんです」「うん」
「敦賀さんみたいに 誰もが認める役者になりたいんです」「そうか」
「それで 敦賀さんにつりあうようになりたい」「今のままでも十分だよ」
でも 君が俺のために頑張ってくれるなら こんなに嬉しいことはない
俺は君の傍にずっといるから 味方だから 頑張りなさい

……アレもう俺の抱擁はいらないの?
スッキリしたって ……そんな
この火照った体をどうしてくれるんだ
って何 さっきの映画の続きを観る?
頼むから止めてくれ

スキップ・ビート!|初出2003,改稿060103